【3月15日まで】誰に必要?確定申告の概要と遅れや申告ミス時の対応・必要書類までをまとめて解説

確定申告の基本的な概要まとめ
「確定申告」とは?なぜ必要?する必要があるのはどんな人?
「確定申告」とは…すべての所得における所得税等の金額を確定するための手続きを個人で行うこと
確定申告とは、自身や企業の一年間の給与所得、不動産所得など計10種の所得から経費などを差し引いた所得額を算出し、そこから納める税金の金額を計算して国・税務署に報告する手続きのことを意味します。
- 自営業、フリーランス等の個人事業人は、所得税の確定申告
- 会社員やパート・アルバイトは、会社が年末調整で所得税の金額を確定(場合によっては、自身で確定申告の必要あり)
【自身で確定申告が”必要”になる人の例】
・個人事業主/フリーランス/年金受給者
・本業とは別で副業収入が20万円以上ある
・企業に勤めているが会社で年末調整ができなかった場合
→年収が2000万越え
→2か所以上からの給与所得がある(年末調整は1カ所でしかできない)
→年の途中で退職した人
→一定条件を満たした日雇い労働者 等
・年末調整で控除申請できない内容の申告がある場合(雑損控除・医療費控除・住宅ローン控除(初回)・寄付金控除等)
【自身で確定申告が”不要”な人の例】
・会社で年末調整を受けている会社員や公務員等
・年間所得が48万円以下の人
・副収入が20万円に満たない人
・年金受給者の中でも、受給額が400万円以下で源泉徴収を受けている人
年末調整とは何が違う?目的や時期、控除等を比べて確認
確定申告の他に聞き覚えのあるであろう申告手続きと言えば「年末調整」でしょう。
こちらは会社に所属し、事業主を通して税金を納める全ての人が対象となっており、自身が所属する会社を通して所得税の過不足調整手続きを行うものです。確定申告も自身の所得税等の金額を確定させるための手続きであり、似たようなものに見えますが、確定申告の場合は本業以外の複数からの給与所得がある人や、所得が一定額を超える人など特定の条件を超えている場合や、年末調整を通しては申告・申請ができない控除や損益通算等を受けるための手続きでもあるため、控除手続き忘れによる損をしないよう、自身に申告の必要があるのかをしっかりと理解しておきましょう。
年末調整 | 確定申告 | |
目的 | 事業主が従業員の給与所得を確定し、所得税額を正確に計算し直した後、徴収・還付すること | 給与所得・不動産所得等、10種類の所得の合計額を計算し、自身で国(税務署)へ申告することで納税額を確定すること |
時期 | 一般的な会社は11月~翌年1月 *翌年1月31日までに事業者は必要書類を税務署に提出 | 翌年の2月16日から3月15日までに確定申告書を提出 |
実施者 | 会社 | 個人 |
受けられる控除 | 基礎控除・配偶者控除・扶養控除・ひとり親控除・寡婦控除・社会保険料控除・生命保険料控除・地震保険料控除・勤労学生控除・小規模企業共済等掛金控除・障がい者控除・住宅ローン控除等… | 基礎控除・配偶者控除・扶養控除・ひとり親控除・寡婦控除・社会保険料控除・生命保険料控除・地震保険料控除・勤労学生控除・小規模企業共済等掛金控除・障がい者控除・住宅ローン控除等… *確定申告のみで受けられる控除…雑損控除・医療費控除・寄付金控除 |
年末調整について詳しく知りたいという方は、こちらの記事で紹介していますので合わせて確認してみてください。
確定申告の提出期限はいつ?
遅れる場合や申告内容を記入漏れやミスがあった場合の対応は?

確定申告を行うことが可能な期間は2月16日~3月15日の約1カ月です。
1カ月もあると余裕に思ってぎりぎりに準備を始めてしまうと、間に合わなくなることも十分に考えられます。その場合ペナルティが課され、税負担がさらに大きくなってしまいますので注意すると共に、なるべく早めに申告や納付を済ませておくことが大切です。また支払いが遅れた場合でも、できる限り早めに納付を完了させるよう心掛けましょう。
もし申告・納付が遅れる場合は…
確定申告には、申告や納税が遅れる場合の措置として、猶予制度と延納期間も設けられています。
利用要件 | 留意点 | |
猶予 制度 | ・災害/盗難/本人や家族の病気/負傷/事業の廃業や休業/なんらかによる著しい損失などがあること ・上記理由により、一時に納付することが難しいと認められること ・本来の期限から1年以上経過した後、修正申告等により納付税額が確定したこと ・「納税の猶予申告書」を期限までに届出ること ・担保の提供があること(猶予の額が100万以内/猶予期間が3カ月未満等は提供不要) | ・納付期限は1年の範囲内。 申請者の財産や収支状況に応じて、最も早く国税を完納が可能と認められる期間 |
延納 制度 | 【所得税】 ・納期日までに1/2以上の税額納付 ・確定申告書にある延納の届出の欄へ記載して届出 | ・支払い延納期日は5/31まで ・延納中は年0.9%の利子税が発生 |
猶予制度では、やむを得ないなんらかの事情により納付が難しい場合の救済措置として、負担額は変わらず、納付期間を期限付きで伸ばすことができます。しかし、納付遅滞の理由が明確でない場合に、本来納税すべき1/2以上納めていれば延納できる延納制度では、年0.9%の利子税がかかるため、税の”負担増”が発生します。しかし、これはまだ延納制度の一つであり、この延納制度を申請・利用せず、ただ申告や納税が遅れている場合にはもっと大きなペナルティが発生します。それが無申告加算税と延滞税です。
ペナルティの概要 | ペナルティの対象外や控除 | |
無申告加算税 | 本来納める額に罰金が加算されるもの ・納税額が50万未満=15% ・納税額が50万以上=20% 納税額に上記の税率をかけた額が罰金 ただし、税務署調査の前に自主申告すれば加算税率は5%に軽減 | ・無申告に正当な理由があった場合 ・期限を過ぎて申告の後、期日までに税額を納付した場合 ・期限後の申告日から過去5年以内に加算税を課されたことがない場合 |
延滞税 | 期限内に納税されなかった場合に発生する罰金で、納期限の翌日から申告書を提出するまでの日数に応じて利息分の延滞税が科されます。 ①納付期限翌日から2カ月以内に完納した場合は年率7.3% (納付すべき税額 × 年率7.3% × 期限翌日~完納日または2カ月経過までの日数)÷ 365日 ②納付期限翌日から2カ月を超えて納付した場合は年率14.6% (納付すべき税額 × 年率14.6% × 2月を経過した翌日~完納日までの日数)÷ 365日 上記の①+②が延滞税の額になります。 | 【①期限内申告書の提出後1年以上経過して修正申告や更正があった場合】 法定納期限から1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日または更正通知書を発した日までは延滞税の計算期間から控除されます。 【②期限後申告書の提出後1年以上経過して修正申告又は更正があった場合】 その申告書提出後1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日又は更正通知書を発した日までは延滞税の計算期間から控除 (*上記いずれも、不正等により重加算税が課された場合を除く) |
もし申告内容に間違いがあった場合は…
もし、確定申告内容の間違いに気づいた場合には、改めて申告書等を作成し、確定申告期限までに提出する必要があります。
提出後の対応を状況別に見ていきましょう。
①税額を実際より多く申告していたとき
間違いにより、納付すべき税額よりも多く納付していた場合や、還付される金額が過少となる場合等に、更正の請求手続きを行うことができます。
所轄の税務署に「更正の請求書」を提出することで、原則申告期限から5年以内であり、且つ請求内容が正当と認められた場合には、納め過ぎた税金が還付されます。
②税額を実際よりも少なく申告していたとき
間違いにより、納付すべき税額を少なく申告していた場合にも、修正申告を行い正しい税額への修正が必要になります。またこの場合は修正申告によって新たに納付することとなった税額には、修正申告書を提出する日(納期限)までに納付手続きも行ってください。この期日を過ぎると上記にある延滞料も合わせて納付しなければならなくなるためです。期日について十分に注意しましょう。
確定申告の「青」と「白」は何が違う?それぞれのメリット・デメリットは?

青色申告と白色申告とは?
上記の図にあるように、確定申告には大まかに青色申告と白色申告の2種類あります。
- 青色申告…必要書類が多く、会計帳簿が厳密的なかわりに多くの特別控除が利用できる
- 白色申告…必要書類や会計帳簿は簡易的なかわりに、特別控除が利用できない
青色申告をするためには、確定申告期限である3月15日以前に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出し、青色申告の承認を受ける必要があります。事前の承認手続きを行っていない場合は青色申告を進めることができず、白色申告になります。
新規開業した場合や、相続による業務継承の場合は期限等が変わりますので、必要がある人は国税庁ホームページ「青色申告制度」より確認しましょう。

【確定申告の青と白それぞれのメリット・デメリット】

白色申告書のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・提出が必要な申告書や帳簿がシンプルで簡易的 ・事前の手続き(承認申請等)が必要ない | ・青色申告と比べ、特別控除を受けられない (簡易帳簿でも10万円の青色申告特別控除は受けることが可能) ・赤字の繰り越しや前年の黒字との相殺(損益通算)ができない ・納税者が営む事業に従事する配偶者や親族(事業専従者)への給与を一部しか経費対象にできない |
上記のように、簡易的な申請である分、特別な控除を受けられなかったり、一部事業で赤字が出た場合の赤字と黒字の相殺ができないという大きなデメリットがあります。デメリットの一つにある専業専従者の経費対象額については、白色申告の場合下記の通りになります。
専業専従者控除の控除額について
・事業専従者が配偶者の場合86万、配偶者でなければ50万
・控除前の事業所得金額を専従者数+1の数で割った金額
上記のうち、より低い金額の一方が控除適応されるため、控除可能額が限定的になっているのです。
青色申告のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・特別控除が最大65万円受けられる ・赤字を3年間繰り越し、黒字と相殺(損益通算)ができる ・生計を共にする家族の給与を経費対象にできる ・30万円未満の固定資産・事務所家賃や電気代も全額経費対象にできる (事務所兼自宅の場合は事務所割合分のみ) | ・事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要がある ・提出が必要な書類が多くやや複雑な形式の書類記入が必要 |
上記のように、白色申告と比較して申告するための書類や帳簿の準備が多く、より厳密的になりますので、しっかりと青色申告のメリットを得るためには、それなりの準備も必要ということになります。
メリットにある最大65万円の特別控除は控除対象となる所得の種類が決められています。詳細は下記を確認しましょう。
青色申告特別控除対象にあたる所得の種類
青色申告特別控除を受ける場合、事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかの所得がある必要があります。
事業的規模ではない不動産所得や山林所得がある事業者は55万・65万の控除について適応できないことに注意しておきましょう。
◆ 事業所得
事業所得とは、製造業や小売業、農業等の事業を営む人が、事業によって得た所得のことで、計算方法としては下記になります。
副業等で得た所得などは”雑所得”にあたるので事業所得にはあたりません。
総収入金額 ー 必要経費 = 事業所得 |
◆ 不動産所得
不動産所得とは、土地・建物・借地権などの”貸付による所得”を意味します。貸付が対象であって、不動産の売買売買等は”譲渡所得”にあたるため不動産所得ではありません。
◆山林所得
山林所得とは、山林を伐採もしくは立木の状態で譲渡することで得た所得を意味します。山林と同時に土地を譲渡した場合には、その土地部分は”譲渡所得”の扱いになります。また、山林を取得して5年以内に譲渡する場合は、山林所得ではなく事業所得もしくは雑所得の扱いになりますので注意しましょう。
確定申告で必要な書類一覧まとめ
さて、ここからは実際の確定申告に必要な書類の書き方をご紹介します。
比較表のとおり、白色・青色でそれぞれ必要な書類が違います。今回は必要書類ごとに順に見ていきましょう。
青色申告 (65万円控除) | 青色申告 (10万円控除) | 白色申告 | |
提出書類 | ・確定申告書B ・青色申告決算書 ・賃借対照表と損益計算書 ・第三表(分離課税用、事業所得に加え譲渡所得がある場合) ・第四表(損失申告用/赤字で青色申告する場合) | ・確定申告書B ・青色申告決算書(損益決算書) ・第三表(分離課税用、事業所得に加え譲渡所得がある場合) ・第四表(損失申告用、赤字で青色申告する場合) | ・確定申告書B ・収支内訳書 |
【白色申告・青色申告】で必要な『確定申告書Bー確定申告書 第一表・第二表』


これは確定申告第一表、第二表とも呼ばれ、確定申告をする場合には必ず提出すべき書類になります。
第一表では、自身の住所や氏名から給与所得・納める税金の計算・控除の内訳などの基本情報を記入します。
第二表では、所得の細かな内訳や配偶者や家族に関する事項を記入します。
【青色申告】で必要な『青色申告決算書』
青色申告で必要になる書類には『青色申告決算書』というものがあります。青色申告決算書は形式が決まっており、内容としては以下の4枚に分けられています。
1.損益計算書
2.損益計算書の内訳(月別売上/仕入金額/給料の内訳等)
3.損益計算書の内訳2(売上金額/仕入額の詳細/減価償却の計算)
4.貸借対照表 *控除額10万円の青色申告の場合は不要
控除額65万円、控除額55万円の青色申告特別控除を適用する場合は、4枚全てを記入し提出する必要があります。
控除額10万円の青色申告特別控除を適用する場合は、4枚目の貸借対照表の提出が不要になります。

1枚目の損益決算書では、売上金額、売上原価、経費、各種引当金・準備金等、青色申告特別控除の5つの項目分けがあります。帳簿がすでに完成している場合には、それぞれ金額を合計し、転記するだけでになります。各項目ごとの間に、差し引き金額と所得金額を記入しましょう。

2枚目には、月別売上(収入)金額及び仕入金、給料賃金の内訳、専従者給与の内訳、貸倒引当金繰入額の計算、地代家賃の内訳、青色申告特別控除額の計算の5つの項目がそれぞれありますので、順に確認しながら記入していきましょう。給与を支払っていない場合など、該当事項がない欄は空欄のまま提出します。
「地代家賃」とは、事務所を借りている場合に事務所の住所や賃料などの詳細を記入するものです。私用と事業が混ざっている場合には、事業で使われている部分の床面積で割合を計算するなどして計上しましょう。

3枚目には、売上(収入)金額の詳細、仕入金額の詳細、減価償却費の計算、利子割引料の内訳、税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳、本年中における特殊事項の6項目があります。「売上(収入)金額の詳細」項目は、2023年分の決算書以降追加となった項目で、主要取引先についての情報やインボイス登録の番号などの記入欄も設けられています。
「減価償却費の計算」欄は、減価償却の資産を保有している場合に記入しましょう。減価償却とは、時の経過等によって価値が減っていく資産のことで、業務で用いられている建物、建物附属設備、機械装置や器具備品、車両運搬具などの資産を意味します。
「利子割引料の内訳」とは、融資の利子・手形の割引料やクレジット決済のリボ払いを利用した場合などでの支払いがある場合に記入が必要となります。
「特殊事情欄」には、減価償却の計算方法や売り上げの計上基準の変更等、税務署に伝えるべき特殊な事情がある場合に記入します。

貸借対照表は、期首時点と期末時点の資産や負債などの状態を記入するもので、「バランスシート」とも呼ばれるものです。最大65万円、もしくは最大55万円の青色申告特別控除を受ける場合は必ず必要になる用紙です。「資産の部」「負債・資本の部」共に、左側に期首、右側に期末の数字を書き入れましょう。
【青色申告】で必要な『第三表(分離課税用/事業所得に加え譲渡所得がある場合)』

第三表では、分離課税の中でも確定申告が必要な申告分離課税の対象である所得を記入するもので、分離課税とは、他の所得と分けて税額を計算することを意味します。
税金控除済み金額が入金される銀行預金の利息等のように、源泉分離課税の対象である所得は分離課税の対象とはならない点に留意しましょう。記入する必要がある所得は以下の通りです。
譲渡所得の一部 | 土地・建物の売却による譲渡所得や株式等の売却による譲渡所得 |
配当所得の一部 | 上場株式等による配当所得 |
雑所得の一部 | FXや先物取引 |
山林所得 | 取得後5年以上経つ山林を伐採もしくは立木のまま譲渡した場合の所得 *土地・山林共に譲渡する場合、土地部分は譲渡所得にあたる |
退職所得 | 退職所得の受給について、申告書を提出していない退職所得 |
【青色申告】で必要な『第四表(損失申告用/赤字で青色申告する場合))』


もし事業成績が赤字だった場合、確定申告手続きを行うことで、本年度分の損失を翌年度以降へ繰り越すことができます。これを損失申告といいます。
翌年以降に繰り越すことができる(赤字)は、本年度中の他の所得で生じた所得金額(黒字)と差し引いて残る損失額のみとなり、この差し引きを損益通算と言います。
例として、2022年の一年間の事業所得が100万円の損失(赤字)だったとしても、同じ年の不動産による所得で100万円を超える黒字が出ていれば、それによって赤字が相殺されるというイメージです。そのため、この場合は、翌年度以降へ繰り越せる事業所得の損失はありません。黒字よりも赤字が多かった場合に、赤字額を翌年に繰り越すことができます。そのメリットとしては、翌年の業績で多くの黒字となった場合に、去年の赤字額の分を差し引いた額の所得税が課税対象となるため、所得税負担を軽減することができるのです。
損益通算は白色申告のでも行うことができますが、益通算の結果残った損失額を翌年度に繰り越すためには、青色申告を選択する必要があるので、注意しましょう。
【白色申告】で必要な『収支内訳書』
白色申告では、青色申告決算書の代わりに収支内訳書の提出が必要になります。収支内訳書には3種類あり、「一般用」「農業所得用」「不動産所得用」に分かれていますが、事業所得の場合は一般用の用紙を使います。


収支内訳書とは、収入、売上原価、経費の内訳、減価償却費の計算等、1年間の事業の業績や経費等をまとめた書類を意味します。確定申告にて、この書類を作成するためにも、取引や売上・経費等について記載した会計帳簿を普段から作成しておく必要があります。それらを各項目ごとに集計し、その金額を転記することでスムーズに作成することができます。