確定申告書の第一表・第二表・第三表・第四表の違いは?誰に必要?書き方と一緒にまとめて解説

目次
そもそも確定申告は誰がする?期限は?
「確定申告」とは…すべての所得における所得税等の金額を確定するための手続きを個人で行うこと
2024年 確定申告の期限 2月16日~3月15日
確定申告とは、自身や企業の一年間の給与所得、不動産所得など計10種の所得から経費などを差し引いた所得額を算出し、そこから納める税金の金額を計算して国・税務署に報告する手続きのことを意味します。
- 自営業、フリーランス等の個人事業人は、所得税の確定申告
- 会社員やパート・アルバイトは、会社が年末調整で所得税の金額を確定(場合によっては、自身で確定申告の必要あり)
【自身で確定申告が”必要”になる人の例】
・個人事業主/フリーランス/年金受給者
・本業とは別で副業収入が20万円以上ある
・企業に勤めているが会社で年末調整ができなかった場合
→年収が2000万越え
→2か所以上からの給与所得がある(年末調整は1カ所でしかできない)
→年の途中で退職した人
→一定条件を満たした日雇い労働者 等
・年末調整で控除申請できない内容の申告がある場合(雑損控除・医療費控除・住宅ローン控除(初回)・寄付金控除等)
【自身で確定申告が”不要”な人の例】
・会社で年末調整を受けている会社員や公務員等
・年間所得が48万円以下の人
・副収入が20万円に満たない人
・年金受給者の中でも、受給額が400万円以下で源泉徴収を受けている人
確定申告の概要や必要書類について詳しく知りたい方は下記の記事を確認しましょう!
確定申告書の第一・第二・第三・第四は何が違う?
- 第一表 …自身の住所や氏名から給与所得・納める税金の計算・控除の内訳などの基本情報を記入
- 第二表 …所得の細かな内訳や配偶者や家族に関する事項を記入
- 第三表 …分離課税の中でも確定申告が必要な申告分離課税の対象である所得を記入
- 第四表 …その年に生じた赤字・損失額を申告し、損益通算したり純損失を翌年以降に繰り越すためなどに記入
第一表・第二表は、確定申告を行う全ての人に必要な書類。
第三表については、事業所得に加え譲渡所得がある場合に必要な書類。
第四表については、総合課税の不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得で生じた損失金額のうち、他の総合課税の所得と通算した場合でも控除しきれない損失額を翌年以後に繰越すために必要な書類です。赤字として申告することで、損益通算により課税対象額が減り還付金が戻ったり、翌年黒字になった場合に、課税額を抑えることができます。
確定申告書、それぞれの記入方法まとめ
所得税及び復興特別所得税の確定申告書『第一表』

出典: 国税庁「所得税及び復興特別所得税の確定申告書 第一表、第二表」ダウンロードはこちら
◆ 個人に関する情報
自宅や事務所等の住所やマイナンバー・生年月日・氏名等を順に記入します。

【記入欄名】 | 【記入方法】 |
令和〇年1月1日の住所 | 上記欄と同じであれば「同上」と記入 |
職業 | 「青果小売業」など職業を具体的に明記 |
種類 | 該当するものすべてに〇をします。 ・青色/ 青色申告をする者 ・分離/ 確定申告書 第三表(分離課税用)を使用する人 ・国出/ 国外転出時課税制度の適用を受ける人 ・損失/ 確定申告書 第四表(損失申告用)を使用する人 |
◆ 収入金額等
『収入金額等』の欄では、確定申告を行う年の種類別の収入の記入が必要になります。該当の収入がない場合は無記入で大丈夫です。所得には全部で10種類の区分があり、ここにない「利子所得」は所得金額等の欄に。「退職所得」「山林所得」は後の第三表で申告します。

▷ 各項目の記入方法
【記入項目】 | 【記入内容】 |
事業/ 営業等(ア) | フリーランスや個人事業主としての収入 |
事業/ 農業(イ) | 農業により得た収入 |
不動産(ウ) | 不動産により得た収入 (土地・建物の貸付や地上権等の権利の貸付、また航空機や船舶の貸付を含む) |
配当(エ) | 投資信託の収益分配や株の配当等で得た収入 |
給与(オ) | 会社員やアルバイトとしての収入 【区分欄の数字】 『1』…給与等の収入金額が850万円以上、且つ同一生計配偶者や扶養親族に特別障害者がいる場合、または23歳未満の扶養親族がいる場合 『2』…給与所得と公的年金等の雑損控除があり、給与所得控除後の給与金額+公的年金等の雑所得金額が10万以上の場合 『3』…上記どちらにも当てはまる場合 |
雑/ 公的年金等(カ) | 国民年金・厚生年金などの公的な年金で得た収入 |
雑/ 業務(キ) | 副業などの事業ではない業務で得た収入 |
雑/ その他(ク) | (カ)公的年金等・(キ)業務、以外で得た収入 |
総合譲渡/ 短期(ケ) | 5年以内の保有期間がある土地・建物・株式の譲渡により得た収入 |
総合譲渡/ 長期(コ) | 5年以上の保有期間がある土地・建物・株式の譲渡により得た収入 |
一時(サ) | 競馬の払戻金や懸賞の賞金等、営利目的ではない収入以外で得た収入 |
▷ 区分欄の記入方法
区分欄名 | 区分欄の記入数字 |
営業等(ア)区分 農業(イ)区分 不動産(ウ)区分2 | 自分の令和5年度の記帳/帳簿の状態に該当の番号を記載![]() |
不動産(ウ)区分1 | 国外中古建物の不動産所得にかかる損益通算等の特例適用がある場合「1」を記入 |
給与(オ)区分 | 【区分欄の数字】 『1』…給与等の収入金額が850万円以上、且つ同一生計配偶者や扶養親族に特別障害者がいる場合、または23歳未満の扶養親族がいる場合 『2』…給与所得と公的年金等の雑損控除があり、給与所得控除後の給与金額+公的年金等の雑所得金額が10万以上の場合 『3』…上記どちらにも当てはまる場合 |
◆ 所得金額等
『所得金額等』の欄には、収入から必要な経費を差し引き算出した金額を記入します。必要経費については、「青色申告決算書」や「収支内訳書」等に計上している数字を利用しましょう。
給与所得者や公的年金の受給者である場合は、それぞれ源泉徴収票を確認の上、給与所得控除や公的年金等控除額を差し引かれた額を転記します。

◆所得から差し引かれる金額
『所得から差し引かれる金額』の欄では、下部に一覧記載の各控除を利用する場合に、その控除額を記入します。中には、合計所得金額が一定額を超えると適応できない控除もありますので注意しましょう。

▷所得控除の種類一覧
控除の種類 | 控除適応の内容 | 控除額 | 合計所得額の制限 |
社会保険料控除 | 健康保険料や国民年金等の社会保険料の支払った場合に適用 (生計を一にする配偶者・親族も含む) | 支払っている 保険料の合計額 | ー |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済やiDeCoの掛金を支払っている場合に適用 | 支払っている 掛金の合計額 | ー |
生命保険料控除 | 生命保険や民間介護保険等に加入し保険料を支払っている場合に、保険料や契約時期、内容に応じて控除が適用 | 規程の計算式に当てはめ算出(最大12万円) | ー |
地震保険料控除 | 地震保険料を支払っている場合に適用 | 既定の計算式に当てはめ算出(最大5万円) | ー |
寡婦、ひとり親控除 | 納税者がひとり親であった場合に適用 | 35万円 | 500万円 |
勤労学生、障害者控除 | 勤労学生控除…働きながら学校に通う場合に適用 障害者控除…納税者や配偶者・扶養親族に障害がある場合に適用 | 勤労学生…27万円 障害者…27万円(特別障害者:40万/同居特別障害者:75万円) | 勤労学生…75万 |
配偶者(特別)控除 | 納税者・配偶者の合計所得額が条件内であれば適用 | 最大48万円 | 1000万円 |
扶養控除 | 16歳以上の子どもや両親等を扶養していた場合に適用 | 38万円 ・扶養親族が19歳~23歳…63万円 ・老人扶養親族…最大58万円 | ー |
基礎控除 | すべての人に適用 | 最大48万円 合計所得が2500万を超えると減額 | 2500万円 |
雑損控除 | 災害・盗難等による損害があった場合に適用 | 下記で金額の大きい方 ・差引損失額ー総所得金額×10% ・差引損失額のうち災害関連支出ー5% | ー |
医療費控除 | 生計を一にする配偶者や親族を含み、年間医療費や特定の薬代が10万円を超えた場合(年間総所得が200万円未満…医療費がその5%を超えた場合) | (年間合計医療費ー保険金受給額)ー10万円 年間総所得が200万以下…所得額×5% | ー |
寄付金控除 | ふるさと納税の利用や特定の団体への寄付を行った場合に、寄付額に応じて適用 | 下記で金額の少ない方ー2000円 ・寄付金合計額 ・所得×40% | ー |
配偶者(特別)控除の金額

所得控除の中の一つ、配偶者控除を利用した場合の控除額は、上記の表を参考にしましょう。
納税者本人の合計所得だけでなく、配偶者の合計所得によっても金額が変わるため、必ず確認し記入することが大切です。
◆税金の計算・修正申告
『税金の計算』の欄では、課税対象の所得金額を基に、実際に負担する税額を算出し、該当する欄に記入していきます。所得税や住宅ローン控除等の税額控除金額や、納税額を記入するものです。

所得税額の計算式
『所得税額』 = 課税所得金額 × 所得税率 ー 控除額
【所得税率および控除額一覧】
課税対象となる所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円 | 10% | 97,500円 |
330万円~694万9,000円 | 20% | 427,500円 |
695万円~899万9,000円 | 23% | 636,000円 |
900万円~1,799万9,000円 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
『修正申告』欄
修正申告欄は、万が一『確定申告期限超過後に、本来支払うべき納税額よりも少なく申告していた場合』に改めて申告、提出する際使用する欄になります。自身で気づき、修正できれば延滞税のみの負担で済みますが、税務署からの指摘などで発覚した場合には、さらに過少申告加算税・重加算税等が課せられ、負担はより大きくなるので注意しましょう。

◆その他・延納の届出
『その他』の欄には、該当箇所があった場合に、金額を記入しましょう。
延納の届出については、所得税の延納を希望する場合に忘れずに記入しましょう。

所得税及び復興特別所得税の確定申告書『第二表』の書き方
第二表では、所得の細かな内訳や配偶者や家族に関する事項を記入します。
こちらも項目ごとに内容を確認していきましょう。

◆所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)
各項目の内容を欄に沿って記入していきます。
収入金額や源泉徴収額などは源泉徴収票にて確認し転記が可能な欄ですので、確認してみましょう。

◆総合課税の譲渡所得・一時所得に関する事項
こちらの欄には、不動産の売却による譲渡所得や加入保険の一時金・満期の払戻金、競馬などでの払戻金等が該当します。

◆保険料控除等に関する事項
第一表で記入済みの社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除、生命保険料・地震保険料控除等の細かな詳細を記入する欄です。
年末調整表を記入する場合と同じように、自身の加入している保険の支払額を記入します。

◆本人に関する事項・雑損控除に関する事項・寄付金控除に関する事項
こちらの項目についても第一表で記入した項目について、該当の項目のチェックや詳細を記入します。
寄付金控除に関する事項については、ふるさと納税などで複数寄付している場合には、一部のみを記載して寄付の合計金額を記入しましょう。

◆特例適用条文等
こちらの欄には、特例制度による税額控除がある場合に記入が必要になります。
多いのがマイホームを購入し住宅ローン控除の適用がされた人です。この場合は居住開始の年月日を記載します。(例)…「令和4年5月10日 居住開始」
その他、マイホームを譲渡し損失や利益があった場合なども記載が必要になります。

◆配偶者や親族に関する事項
こちらの欄には、控除の対象となっている配偶者や親族がいる場合にその情報を記入するものです。
住民税欄の別居に〇を付けた場合には、配偶者控除や社会保険料控除等の適用対象外となりますので、第一表の欄にも金額は記載しない形になります。16歳未満の親族の場合は[16]に〇を付けましょう。

所得税及び復興特別所得税の確定申告書(分離課税)『第三表』の記入方法
株式売買やFX取引等による所得があった場合、給与所得や事業所得等とは別に税額を計算する”分離課税”と呼ばれるもので、第一表や第二表に加えて第三表への記入・申告が必要があります。

所得税及び復興特別所得税の確定申告書(分離課税)『第三表』ダウンロードはこちら
「分離課税」の対象となるものは?
分離課税 対象所得 | 概要 | *補足* |
(一部の) 譲渡所得 | 土地・建物・株式の売却、譲渡によって得た所得を種類別に分けて記入 【土地/建物】所有期間により税率が変わる ・長期譲渡…一般分/軽減分/特定分 ・短期譲渡…一般分/軽課分 【株式の譲渡】種類によって損益通算や繰越控除が一部あるため ・上場株式等(上場の株式や投資信託/REIT/公債/地方債/外国債券/社債) ・一般株式等(上場株式等に該当しない非上場の株式等) | 〇長期譲渡 →保有期間が5年以上 〇短期譲渡 →保有期間が5年未満 |
(一部の) 配当所得 | 配当所得のうち、源泉徴収がされていないもの | (上場株式等では証券会社から配当金支払いがされる際に 税額分が源泉徴収される場合も多い。 その場合は申告しないという選択が可能) |
(一部の) 雑所得 | FX(外国為替証拠金取引)や先物取引による所得 (商品先物取引、FX(外国為替証拠取引)、カバードワラント等による差金決算での所得など) | 〇先物取引 →元の商品について将来決まった日、 決まった価格で売買することが事前約束された取引。 約束した期日を迎えると約束した金額で取引を決済します。 |
山林所得 | 取得して5年以上の山林を立ち木状態で譲渡、または伐採して譲渡した場合の所得 (山ごと譲渡する場合、土地部分は譲渡所得にあたる) | 山林が取得から5年以内の場合は 事業所得または雑所得に該当 |
退職所得 | 勤務先に退職所得の受給の受給に関する申告書を提出していない場合 | 通常、勤務先での源泉徴収で課税関係は 終了することがほとんどです。 |
特例適用条文

「特例適用条文」の欄には、第二表でもあったように軽減税率等の特例を利用する場合に、記載が必要になる項目です。
例としては、
・マイホーム譲渡時の長期譲渡所得の軽減税率の特例(措法31条の3)
・マイホーム買い換え時の譲渡損失/損益通算/繰り越し控除の特例(措法41条の5)
などが挙げられます。
収入金額

各項目に該当する箇所があった場合に収入金額を記入します。
分離課税のうち、短期譲渡・長期譲渡が土地や建物の譲渡収入により記載する欄です。
軽減分と特例分については、該当する特例を適用したい場合に記入します。
土地・建物の譲渡の場合には、減価償却後の取得価格や仲介手数料等を差し引く前の、売却自体の収入額を記入しましょう。
所得金額

所得金額とは、実際の利益のことを意味します。そのため株式等の譲渡所得の場合、譲渡価格から所得価格・手数料等を引いた金額を記入します。土地・建物などの譲渡において特別控除を適用する場合には、特別控除を引いた金額を所得額として記載しましょう。
税金の計算
課税される所得金額

上から1,2行目にある「12」「29」については確定申告書の第一表を基にそのまま記入可能な部分です。
・課税される所得金額「77」… 「12」ー「29」の金額を記入
それ以降は対応分の番号の所得金額について、1000円未満を切捨てで記入してください。
税額

税額の欄については、課税される所得額ごとに税率を乗じて税額を計算した後、対応分欄に記載します。
・「93」には税額の合計を記入→第一表の「31」にも転記。
その他 (繰越損失等)
こちらの「その他」の欄には、本年分に差し引く繰越損失がある、もしくは翌年以降に繰越損失がある場合に記入します。株式の売買や先物取引、FX等により譲渡損失がある場合に記載しましょう。

分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項

上記内容に該当する箇所があれば、忘れずに記入しましょう。
所得税及び復興特別所得税の確定申告書(損失申告用)『第四表』の記入方法
確定申告書の第四表は、所得で一定の損失があり、その損失額を申告することで翌年以降の3年間にわたって損失の繰り越し控除を行い、将来の節税に繋げる場合に記入が必要になるものです。
この「一定の損失」というのは主に純損失や雑損失、そして株式や居住用財産等に係る損失が対象となります。
純損失は、事業所得や不動産所得、譲渡所得、山林所得から赤字の所得を黒字所得から相殺(損益通算)してもなお、赤字となった場合の金額であり、雑損失は、盗難や災害等によりその年分の雑損控除として控除しきれない金額がこれにあたります。


所得税及び復興特別所得税の確定申告書(損失申告用)『第四表』のダウンロードはこちら
第四表の書き方についてはこちらの国税庁HP「令和5年分所得税及び復興特別所得税の確定印刻の手引き(損失申告用)」で詳細に説明されています。
自身に必要な書類や、記入漏れなどがないかを確認し、申告忘れ等によってペナルティの課税等を受けたり、せっかくの控除を見逃したりすることのないよう十分に注意し、適切に確定申告を済ませられるようにしましょう。