介護費用は5年で500万円超え!親の介護費「在宅と施設」ではいくらかかる?老後費の現実と対策を紹介

若者や子どもが年々減少し、一方で高齢者が増え続ける、超高齢化社会の今。要介護認定者もおよそ682万人まで増加しているとされています。
しかし、新型コロナウイルスや現在の日本経済状況や情勢等により、自身で介護費用負担ができなくなる家庭も増えているとされているのです。
介護費が払えなければ、適切なサービスを受けることが難しくなり、生活にも苦労が強いられるでしょう。年金等による充分な収入や預貯金の余裕がなく、自身の親や親戚の介護費を負担する必要も出てくるかもしれません。また、自身の老後生活を踏まえて、介護費に実際何にいくらかかるのか、どのような生活を自身が選びたいのか、考えておくためにも、介護について具体的に知っておきましょう。

施設入所は在宅介護の3倍の費用⁉介護にかかる毎月の目安費は?総額いくら?

【介護費用の平均月額】平均8.3万円

引用: 交易社団法人生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査2021]

【在宅/入所の違い】
場所別の介護費の月平均費用

  • 在宅介護の場合… 4.8万円
  • 施設入所の場合… 12.2万円

引用: 交易社団法人生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査2021]

〈図表Ⅱ-63〉を見ても分かるように、施設利用の場合は在宅介護のおよそ3倍の費用がかかることが分かります。
また、ずっと在宅介護が可能である状態とは限らないため、必要な費用を考えた上で入所のタイミングも検討することが大切になります。
あくまでこちらは平均額を示したものであり、要介護度やサービス内容,施設などにより異なりますが、平均的に見て毎月これだけの額がかかるだけでなく、在宅介護の環境を整えるための住宅改修等による一時金は平均70万円を超えているのです。

引用: 交易社団法人生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査2021]
引用: 交易社団法人生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査2021]


また、「公益財団法人 生命保険文化センター」による調査では、介護期間の平均年数は5.1年(61.1ヶ月)とされており、その約5割が4年以上の介護期間があります。これらのすべての推定介護費を平均の介護期間で計算すると介護費の総額は以下の通りになります。

【”介護期間の平均年数5.1年から考える”介護費目安の総額】

介護費の月額(平均)介護期間の年数(平均)介護一時金介護費の推定総額(端数切捨て)
在宅介護4.8万円5.1年(61.1ヶ月)74万円367万円
施設入所12.2万円5.1年(61.1ヶ月)74万円819万円
平均介護費8.3万円5.1年(61.1ヶ月)74万円581万円

平均から見ていくと、推定介護費は500万円を超え、介護期間が長くなるほどより多くの介護費も必要になります。
在宅介護の平均介護費は4.8万円となっていますが、あくまで介護費であり生活費・医療費などを含めた全ての額ではないことや途中で体調を崩し入院、などを想定するともっともっと費用負担は増えるのです。
もし介護期間が70歳~90歳までの20年必要になれば、平均介護費で計算したとしても、介護費は2000万円を超えるでしょう。

また、老人ホームや福祉施設に入所となれば、まとまった入所一時金も別途負担が必要となるだけでなく自身の介護費以外にも、夫婦であれば当然のことながら配偶者の介護費も考えることになりますので、さらに倍額の費用が必要になるのです。老後ゆとりのある生活をするためにはそれだけ多くの貯蓄や資金が必要となるのです。夫婦で老後ゆとりのある暮らしをするために必要な資金は、平均34.9万円(生命保険文化センターが「夫婦2人でゆとりある老後生活を送るため費用はいくら位か?」というアンケート調査結果参照)とされている程です。

在宅介護費の主な内容

  • おむつ代
  • 介護用具のレンタル費:シャワーチェアやポータブルトイレ等
  • 介護のためのバリアフリー化に伴う住宅改修費等
  • 介護サービス利用料の自己負担分

老人ホーム等施設介護費の主な内容

  • 入居一時金
  • 月額利用料(賃料/管理費/食費/ 水道光熱費/その他)

入居施設の形態やオプション内容、要介護度、そして都市部・地方都市の地域の違いによっても金額は異なります。

介護費の負担軽減ができる”介護保険制度”とは

先程上記で説明した介護費というのは、公的な介護保険サービスを利用した上で、実費となる平均額になります。
介護が必要になってきていると感じた時点で、要介護認定の申請を進めておきましょう。

〈要介護認定申請の手続き〉

1.  住んでいる市区町村の窓口で申請
2.  調査を受け、介護の必要性やどの程度の介護が必要かを判断してもらう
3. 要介護度の決定後、それに応じたサービスを受けることができ、利用上限額まではサービス利用料が自己負担1割になる
  (一定以上の収入がある場合は、自己負担が2割・3割)

要介護区分と心身の状態目安/ 在宅サービス1カ月限度額と自己負担額(一割)

要介護区分心身の状態在宅サービス
1カ月限度額
自己負担(1割)
自立日常生活に支援や見守りの必要なし
要支援1基本的な生活動作は自身で行えるが、一部見守りや手助けが必要50,320円5,032円
要支援2筋力が落ち、歩行や立ち上がりが不安定。介護が必要になる可能性が高い場合。105,310円10,531円
要介護1日常生活や立ち上がりに一部介助が必要。若干の認知機能の低下がみられる。167,650円16,765円
要介護2要介護1よりも生活動作にケアが必要かつ、認知機能の低下がみられる。197,050円19,705円
要介護3生活動作全体に介助が必要で、杖・歩行器・車いす等を使用している状態。認知機能が低下し見守りが必要。270,480円27,048円
要介護4生活上のあらゆる場面で介助が必要。思考力や理解力も著しい低下がみられる。309,380円30,938円
要介護5日常生活全体に介護が必要で、コミュニケーションを取ることも難しい状態。362,170円36,217円
参考: 明治保田生命 「介護費用はどれくらいかかる?」〈表1〉要介護状態の区分

サービス利用費と別枠での負担軽減制度【福祉用具費・住宅改修費】

特定の福祉用具を購入した場合や住宅改修費については、要介護度に関係なく在宅サービスの支給限度とは別枠での支給限度額が設定されています。

  • 毎年4月1日~翌年3月31日の1年間で10万円
  • 住宅改修費として、生涯で一人20万円

上記の通りとなっており、利用者の負担は在宅サービス限度額と同じく1割~3割の自己負担になります。

備えていたはずでも…介護費用が払えなくなる原因と対処法

介護費用が払えなくなる具体的な要因

  • 介護度の進行が早く負担額が増加
    介護度が進行するにつれ、介護費も高くなる傾向にあり想定以上に介護費用が大きくなる可能性もあります。
  • 入院や施設入所による負担額が増加
    もともと在宅介護をしていた場合でも、途中で病気の発症により介護をする側の事情などにより在宅介護ができなくなり入院や介護施設に入居する必要がでてくるのです。
  • 介護費の不足分を補填していた子どもの収入の減少
    子どもが両親の足りない介護費用を補っていた場合などにも、その子どもの収入が減った場合や子どもの家庭の事情などにより、親の介護費を補うことが難しくなる場合もあります。

介護費用が万が一払えなくなった時の対処法

様々な要因によって万が一介護費用が払えなくなった場合があることも考えられます。
施設に入居している場合には、本人からの支払いが難しい時には連帯保証人となっている配偶者や子どもに請求されるため、突然退去させられるということはありませんが、支払いが滞った場合には大抵3カ月~6カ月の猶予期間を経て、強制退去となるようです。

緊急の対策としては以下の7つが挙げられます。

1.生活相談員やケアマネージャーに相談専門家の知識を借りて資金を用意するための手立てを考える
2.公的な減免制度の活用・介護保険料の減免著しい収入減や災害による大きな被害を受けた場合に介護保険の支払いが減免
・高額介護合算療養費制度一年間の医療保険と介護保険が高額な場合に負担を軽減する制度
・高額介護サービス費1カ月間の利用者負担合計額が限度額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度
・社会福祉法人等による利用者負担軽減制度特に生計が困難である人に対し、
サービス提供を行っている社会福祉法人が利用者負担額を軽減するもの
・特定入居者の介護サービス費所得・資産が一定以下な人が介護施設に入居する場合に、食費や住居費が軽減される制度
3.公的な融資/民間介護ローンの利用・公的な融資…長期生活支援資金〈対象条件〉
✓65歳以上
✓抵当権/賃借権の設定がない不動産の所有(担保利用のため)
・民間の介護ローンあくまでローンのため利息はあり(金利3%~4%)
担保・不要のものも多い
4.費用の安い施設を利用する公的施設や地方の安い施設に移る
5.在宅での介護に変更する家族のサポートが必要になる分、費用は抑えられる
6.生活保護の申請を検討受給するための要件あり+
生活において様々な制限がつく
〈受給の要件〉
✓けがや病気などで働けない状態であること
✓世帯年収が居住地区の最低賃金よりも低いこと
✓家族/親族などが援助できない状態であること
7.不動産賃貸や売却で資金を作る施設入居で自宅を使わない場合に、自宅の売却や賃貸活用をすることで収入を得る方法もあります。

老後資金/介護資金に困らないためにしておくべきこと

老後になって介護資金が足りないと困ってしまったり、子どもに負担をかけずに安心した老後生活を築くために大切なことは、具体的な必要資金を把握し、見通しを持って計画的に資産形成を始めておくことです。
今回説明した内容はあくまで”介護費”のみを計算したものであり、別で賃貸・住宅ローンがあれば住居費が、また病気などによる治療が必要になれば医療費・入院費もかかります。不安のない老後・ゆとりある老後生活を目指すためにはより大きな資産が必要なのです。そのために事前に考えておくべきなのが以下の3つです。

  • 自身に適した介護プランを計画する
  • 民間の介護保険などに加入する
  • 必要な資金を計画的に積み立て、貯蓄するための資金形成をしておく

実態として、現状の年金制度で支給される受給額だけでは生活が難しいことは明らかです。「年金受給と生活保護の実態」「老後必要な資金」「資産形成の流れ」などについて下記の記事にまとめていますので気になる方は確認してみましょう。

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